プライベート・ウォー

INTRODUCTION

 英国サンデー・タイムズ紙の特派員として、世界中の戦地に赴き、レバノン内戦や湾岸戦争、チェチェン紛争、東ティモール紛争などを取材してきた女性記者、メリー・コルヴィン。その後、スリランカ内戦で左目を失明し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながらも、黒の眼帯をトレードマークに、世間の関心を紛争地帯に向けようと努めた“生きる伝説”は、2012年、シリアで受けた砲撃で命を落とす――。

真実を伝える恐れ知らずのジャーナリストとして戦地を駆け抜けながらも、多くの恋をし豊かな感性で生き抜いた彼女の知られざる半生が今、語られる。

  ヴァニティ・フェア誌に掲載された記事を基に、名女優シャーリーズ・セロンがプロデューサーとして参加した本作『プライベート・ウォー』。『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』のアラッシュ・アメルによる脚本を映画化したのは、オスカー候補にもなった『カルテル・ランド』や『ラッカは静かに虐殺されている』など、これまで骨太なドキュメンタリーを手掛けてきたマシュー・ハイネマン監督。

初の劇映画作品となる本作でも、単なる伝記ドラマとして描くのではなく、戦場に魅了されてしまった女性の苦悩や葛藤、恐怖なども、クエンティン・タランティーノ作品でおなじみの撮影マン、ロバート・リチャードソンが手掛けるリアルな描写とともに見事に描き切っている。

 戦場記者を天職と考え、黒い眼帯姿も特徴的な反逆精神溢れるメリーを全身全霊で演じるのは、ロザムンド・パイク。夫を追い詰める妻を演じ、オスカー候補にもなった『ゴーン・ガール』に続く、彼女の代表作がここに誕生したといえるだろう。また、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のジェイミー・ドーナン、『ボヘミアン・ラプソディ』のトム・ホランダー、『プラダを着た悪魔』のスタンリー・トゥッチといった実力派俳優たちが、仕事やプライベートで彼女を支えてきた男たちを演じ、脇を固める。
 また、エンドロールを飾るのは、強く逞しく美しいメリーの生き様に心動かされた元ユーリズミックスのアニー・レノックスが8年ぶりに手掛けた新曲「Requiem for A Private War」。2018年ゴールデングローブ賞において、主演女優賞候補となったロザムンド・パイクとともに、主題歌賞候補となった彼女の歌声は、壮絶かつ感動的な物語やメリーのメッセージとともに、観る者の心を突き刺すことだろう。