COMMENT

酒とセックスとアドレナリンを燃料に戦場を駆け抜ける隻眼の女性ジャーナリスト、その使命は弱者の声を世界に届けること。どんなスーパーヒーローよりもカッコいい人が実在したんだ!
町山智浩(映画評論家)
そこが戦場でも自宅でもオフィスでも、メリーはいつも一人だ。軍隊に所属する兵士でもないし、会社に所属する社員でもない。そして誰かの恋人や妻でもない。一人称単数の主語を保持するジャーナリストとして、メリーはいつも屹立している。
森達也(映画監督・作家)
黒い眼帯の特派員記者はフランス高級下着ラ・ペルラを身に纏いひとり激戦地に挑む女性だった。ロザムンド・パイク最高のパフォーマンス。あの声と眼差し。観ている者を画面に集中させ、ひとり闘う女性戦士さながらの気迫。プロデューサーにシャーリーズ・セロンのクレジットも見逃せない!
洞口 依子(女優・作家)
死の近くにいるから、生の濃さを味わえるのか?生きてることを確認するため、死の側に出向くのか?命を生み出す女であることに意味はあるのか?強烈だ。
室井佑月(作家)
とにかく、ロザムンド・パイクのこの役に賭ける意気込みが半端ない。そして、戦場のヒリヒリする緊迫感もただ事じゃない。監督は誰かと思ったら、「ラッカは静かに虐殺されている」のマシュー・ハイネマンだった。なるほど、納得。凄い映画です。
駒井尚文(映画.com編集長)
震えた。臆病者ゆえ生き延びてきた同業として、メリーには敬意と羨望しかない。これは単なる映画を超えた、孤高の魂の追体験。地獄と化したシリアでメリーが何を観たか。一人でも多くの人々に受け取ってほしい。
志葉玲(戦場ジャーナリスト)
「何を見たい」ではなく、「何を世界に伝えるべきか」ーー。 その信念を常に持ち続け、世界中の紛争地を最も激しい時期に取材してきたメリー記者の心情や葛藤がリアルに描かれている。
鈴木美優(ジャーナリスト)
ジャーナリストは、聖職でも英雄でも、そして主役でもない。どうか彼らのレンズの先、眼差しの向こうに広がる光景、そこで生き抜く人々の姿を力の限り想像しながら、この映画を観てほしい。
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
メリーはエゴイストで自分勝手だ。わかっていながら我を通したのは、ジャーナリストとして「伝える」ことに病的なまでにこだわっていたから。それが理解できる私も同じ中毒になっているのかもしれない。
丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
久しぶりに映画らしい映画を観た。 リアルな撮影に主演女優の見事な演技。 これぞ映画だ!
さいとう・たかを(劇画家)
紛争地の現実から「目を背け、記憶から消す」のか、「その存在を認め、理解しようとする」のか。 少しでも多くの人々が後者を選ぶ可能性を信じ、メリーが命をかけて最後の瞬間まで私たちに託したかったことがある。 それを自分の目で確かめることは、あなたが実行できる最初の「世界を変えるための行動」だ。
瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター理事長)
戦場という生死の境で記録することがメリー・コルヴィンの生き方。 刹那的にも見える彼女の軌跡をスクリーンに映し出した制作者たちに、私は首を垂れる。
中江有里(女優・作家)
片目のジャーナリストの心は常に対立する何かとぶつかり合っている。過酷な戦場とPTSDに苦しむロンドンでの生活は並列に描かれ、その内なる葛藤が観客を撃つ。ロザムンド・パイクの身体はその説得力を持つ。
松江哲明(ドキュメンタリー監督)
「自己責任」とか「マスゴミ」とか、そういう貧しい言葉が飛び交うこの国でこそ多くの人に観られるべき。 ロザムンド・パイク一世一代の熱演、戦場シーンの異様な臨場感。映画としても一級品だ。
宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)
生きるということは、容赦のないこの世の「極」の中で最も生きがいのある「中道」を探るものである。 マリー・コルヴィンは殆どの人が経験することのない壮絶な環境の中、もがき苦しみながらも 戦地で生きる人々の力強い「声」となった。彼女の仁義には人類に訴えるものがある。
南谷真鈴(冒険家)
※順不同、敬称略